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産総研・創薬分子プロファイリング研究センターの支援・高度化の取組

産総研・創薬分子プロファイリング研究センター
分子シミュレーションチーム 研究チーム長 広川貴次

 産総研・創薬分子プロファイリング研究センターでは、創薬標的タンパク質を対象に、ホモロジーモデリング、ドッキング計算(タンパク質-タンパク質、タンパク質-低分子、タンパク質-核酸)、分子動力学計算(MD)要素技術に基づいた、立体構造に指南されるドラッグデザインを高精度で実施するための高度分子モデリング技術の支援と高度化を行っています。GPCRやキナーゼなど代表的な創薬標的タンパク質に対する分子モデリング実績を活かした外部研究者への「支援」活動、次世代の標的とされるタンパク質-タンパク質(核酸)相互作用、分子認識に大きな構造変化を伴う難易度の高い標的タンパク質への創薬支援を目指した、大規模計算、分子動力学計算を積極的に活用した「高度化」研究を実施しています。

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 我々の支援研究の特徴は、一言で言うと「合わせ技で1本!」です。例えば、初めはホモロジーモデリングのみの支援依頼でも、支援を進めていく過程で、モデリング構造の最適化や複合体構造が必要だと判断されれば、MDやドッキング計算を上手く取り入れながら、臨機応変に対応するように心がけています。最近(平成24年以降)の支援研究実績として、この「合わせ技で1本」戦略により、6つの論文発表に貢献することができました(PLoS One 10(4), 2015, e0120788; PLoS One 10(3), 2015, e0119451; FEBS Lett. 588, 2014, 4422-4430; Nature 510, 2014, 162-166; Chemical Science, 2014, 5, 1860-1868; Chem. Commun.(Camb), 2014, 50, 2445-2447)。特に我々の戦略を最大に生かすことができた支援事例として、東北大学の土井教授を中心に実施してきました、タンパク質間相互作用阻害天然物の作用機序解明研究(Chemical Science, 2014, 5, 1860-1868)が挙げられます。ここでは、タンパク質タンパク質相互作用解析からドッキング計算、MD計算、相互作用フィンガープリント解析まで幅広い要素技術を活用することができ、天然物合成や、NMR測定に貢献することができました。

 また、高度化された要素技術が必要であると判断された研究については、高度化研究として、技術開発に取り組んでいます。特に、2014年に発表した「in silicoスクリーニングに役に立つGPCRモデリング法の開発(J. Chem. Inf. Model., 2014, 54, 3153-3161)」は、様々なテンプレートモデリングを利用した網羅的なモデル構造構築から活性化合物と不活性化合物を分離でき、更に活性化合物の結合様式にコンセンサスがあるようなモデル構造を選択するシステムとなっています。現在、このシステムを広く利用できるよう、GUI開発にも取り組んでおり、創薬現場で活用されることを期待しています。

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