A1-20 クライオ電子顕微鏡によるタンパク質の高分解能立体構造解析支援

ユニット名

構造解析ユニット

支援担当者

所属 ① 大阪大学 蛋白質研究所
② 大阪大学 蛋白質研究所
③ 大阪大学 蛋白質研究所
氏名 ① 加藤 貴之
② 岸川 淳一
③ 高崎 寛子
AMED
事業
課題名 生命科学と創薬研究に向けた相関構造解析プラットフォームによる支援と高度化
代表機関 理化学研究所
代表者 山本 雅貴

支援技術のキーワード

クライオ電子顕微鏡、単粒子解析、電子線トモグラフィー、FIB-SEM

支援技術の概要

クライオ電子顕微鏡による生体試料の立体構造解析を支援する。支援の内容は、最も一般的で広く普及している単粒子解析法による支援の他に、細胞中の蛋白質の構造を解析する電子線トモグラフィーについても支援を行う。支援にはスクリーニング用クライオ電子顕微鏡としてTalos Arctica(K2カメラ装備)及び本データ撮影用クライオ電子顕微鏡としてTitan Krios(K3カメラ装備)を用いる。

単粒子解析のための試料グリッド作製には、ろ紙を使わない試料凍結装置VitroJetも利用することができる。それにより0.5 μLの試料からでも試料グリッド作製が可能となっており、微量しか精製できないような難解析試料の構造解析も支援できる。

また、大阪大学薬学部井上教授、大阪大学生命機能研究科難波教授によって開発されたグリッド(EG-Grid)を使った試料調製についても支援する。

電子線トモグラフィーでは、収束イオンビーム(FIB)による試料の切削装置AquilosIIを使って、薄膜試料の作製から電子線トモグラフィーの支援を行う。

支援技術の利用例

1. 新型コロナ感染増強抗体とスパイクタンパク質複合体の構造解析

2019年から発生した新型コロナウイルスは変異を繰り返しながら全世界的に猛威をふるっている。コロナウイルス表面のスパイクタンパク質は感染に関わるため、研究が進んでいる。その中で、感染者から検出された抗体の中に、感染を増強する感染増強抗体が確認された。その結合領域と感染増強のメカニズムを明らかにするために構造解析が行われた(下図)。この結果は新型コロナ関連タンパク質として日本で最初のクライオ電子顕微鏡による構造解析の結果である。(Liu Y., et al, Cell,184(13), 2021)

2. V型ATP加水分解酵素の反応サイクル解析

ATP加水分解酵素はナノサイズの分子モーターで、クライオ電子顕微鏡以外の手法での回転サイクルのメカニズムを解析することは困難であった。今回ATP加水分解酵素の回転の中間状態の試料を調製し、それぞれの立体構造解析を行うことで、詳細を明らかにした。(Kishikawa J., et al, Nat. commun., 13, 2021)

支援担当者の研究概要

代表の加藤は、クライオ電子顕微鏡による構造解析の技術開発及び、電子顕微鏡本体の開発にも携わってきた。結晶を作らなくても構造解析ができるクライオ電子顕微鏡の自由度の高さを利用した過渡的に現れる中間状態や、より“生”に近い構造を明らかにすることでタンパク質の本質を明らかにする研究を行っている。
特に、タンパク質である酵素がどのような構造変化をしながら化学反応を促進しているのかを、構造学的知見により明らかにしていくことを目指している。

http://www.protein.osaka-u.ac.jp/cryoem/index.html

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