A1-4 SPring-8タンパク質X線結晶解析支援

ユニット名

構造解析ユニット

支援担当者

所属 ① 理化学研究所 放射光科学研究センター
② 理化学研究所 放射光科学研究センター
③ 高輝度光科学研究センター
氏名 ① 平田 邦生
② 竹下 浩平
③ 水野 伸宏
AMED
事業
課題名 生命科学と創薬研究に向けた相関構造解析プラットフォームによる支援と高度化
代表機関 理化学研究所
代表者 山本 雅貴

支援技術のキーワード

X線結晶構造解析、微小結晶構造解析、高難度結晶構造解析、超高分解能構造解析、測定試料性状評価

支援技術の概要

放射光を利用したタンパク質結晶解析(MX)の包括的支援を行う。AMED-BINDS事業で高度化・整備を進めたMXビームラインの自動測定システムを最大限に活用し、効率的な回折データ収集の支援を重点的に行う。

支援の内容としては以下の5項目を想定している。

  1. 通常構造解析
    1. 30μm以上の単結晶
  2. 微小結晶構造解析
    1. 30 μm未満の多数の結晶造解析
  3. 高難度結晶構造解析
    1. 不均質な結晶構造解析
    2. 形状がいびつな結晶・小さな結晶が集合してしまった試料
    3. 特殊な測定や高度なデータ処理
  4. 高エネルギーX線結晶構造解析
    1. 水素原子など精緻な結晶構造解析
  5. 測定試料性状評価
    1. ビームラインにおける結晶スクリーニングで問題があった場合

1. 通常解析支援

これまでにSPring-8の光源性能を活用した高フラックス微小ビームの安定供給および測定技術の開発・高度化を行い、世界に先駆けて微小結晶を利用した高難度タンパク質結晶構造解析の道を切り拓き、その測定ノウハウを誰でも簡単に利用できる自動測定システムZOO(図)へ実装してきた。30 μm以上の単結晶が得られた場合は通常解析支援とし、凍結試料をSPring-8へ搬送するだけで、自動データ収集および自動データ処理を実施し測定データとともに返送することが可能である。

2.微小結晶構造解析

30 μmを下回る結晶しか得られない場合、多数の結晶を準備し、それぞれから部分的な回折データを収集して結合(マージ)することで高分解能構造解析が実現可能な場合がある。SPring-8ではすでにこのプロトコルは汎用的技術となりつつある。試料をどのように準備しどのように構造解析に必要なデータを測定するかを丁寧にコンサルテーションし、準備した試料からの自動データ測定・自動データ処理まで実施する。必要に応じて最良データの選定、データ解析、構造評価についても支援の対象とする。結晶の取り扱いが難しい場合には、開発中の新規プレート等を利用した測定用の結晶準備についてもオンサイト支援もオプションとして支援する。

3.高難度結晶構造解析

a. 不均質な結晶構造解析

30 μm 以上に成長し、単結晶のように見える結晶も高品質な部分と低品質な部分が混在している場合がある。結晶写真などの情報を見ながら入念なコンサルテーションを通し、ビームサイズの試料への最適化、高品質部分だけを利用するデータ収集・データ処理を適用し構造解析を実現する支援を行う。

b. 形状がいびつな結晶・小さな結晶が集合してしまった試料

タンパク質結晶は得られたが結晶の形状がいびつで単結晶かどうか判断がつかない、小さな結晶が塊を作ってしまう、針状結晶が重なってしまって単結晶で取り出すことが難しい場合など試料準備が困難な場合がある。このような場合にも前述「微小結晶構造解析」と同様にコンサルテーションを通じて結晶準備の方法からデータ収集までを支援する。

c.特殊な測定や高度なデータ処理

放射線損傷をより低減したい、より小さな結晶からのデータ収集がしたい、など必要に応じて特別な設定の測定も可能な場合がある。このような場合にはコンサルテーションで実現の可否や提供可能な測定方法を提案するなどの支援を実施する。また階層的クラスタリングを利用して良質なデータのみを選定してマージするなど高度なデータ処理についても支援の対象とする。

4. 超高分解能構造解析

支援に提供するビームラインの1つBL41XUでは波長0.35~0.60Åの短波長X線を利用することができる。このような短い波長のX線を利用することで、分解能0.8Åを超える超高分解能構造解析の支援が可能である。

5. 測定試料性状評価

SPring-8ビームラインに付帯的な支援として、迅速な構造決定につなげるための構造解析サンプルの性状評価等を支援する。

a. 熱安定性測定

分解能が上がらない、結晶化の再現性が悪いなど、結晶化サンプルが構造解析に耐えうる試料であるかの指標の1つとして熱安定性測定を支援(Tycho.NT6を使った熱変性曲線からの変曲点温度測定など)する。

b. 溶液中の絶対分子量測定

構造決定のために、また取得構造の機能理解のために、事前に結晶化サンプルの溶液中での分子単位をSEC-MALSにて測定する支援を行う。

c. リガンド結合能測定

試料が適切なリガンド結合能を有することは結晶化試料としての良し悪しを判断する指標となる。提供されたリガンドとの相互作用をMicroscale thermophoresisやBiolayer interferometryにより定量する支援を提供する。

d. 結晶化スクリーニングの見直し

回折データが不良な場合等に必要に応じたオンサイトでの結晶化スクリーニング支援を行う。

支援技術の利用例

不均質結晶を利用した構造解析例(Katoh et al. Mat. Chem. 2020)

大量の微小結晶を利用した構造解析の例(Maeda et al.Sci.Adv. 2021)

支援担当者の研究概要

平田 邦生(理化学研究所 放射光科学研究センター):SPring-8 BL32XUの利用支援実施担当者の一員。タンパク質微小結晶構造解析のスペシャリスト&SPring-8 全自動データ収集ZOOシステムの開発者。数多くのタンパク質の微小結晶構造解析、結晶化初期スクリーニング評価の経験を有する。困った結晶試料があれば迷わずご相談を。

竹下 浩平(理化学研究所 放射光科学研究センター):SPring-8サイトの生物系実験施設ハイスループットファクトリーの管理担当者の一員。さまざまなタイプのタンパク質の生産から構造解析までの経験を有する。特に、蛋白質科学、構造解析を目的とした蛋白質生産の経験を活かし、皆様の構造解析支援課題をバックアップします。まずはご相談を。

水野 伸宏(高輝度光科学研究センター):SPring-8共用BLの利用支援実施担当者の一員。タンパク質の生産、結晶化、構造解析に加え、プログラミング、サーバ管理等ビームライン測定の効率的な運用・開発に関わる経験も有する。測定の際に困ったことなど何かあればご相談を。

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