C6-3 タンパク質の動的構造解析

ユニット名

インシリコ解析ユニット

支援担当者

所属 ① 産業技術総合研究所 人工知能研究センター
氏名 ① 富井 健太郎
AMED
事業
課題名 ライフサイエンス研究加速のためのバイオインフォマティクス研究
代表機関 産業技術総合研究所
代表者 富井 健太郎

支援技術のキーワード

分子動力学シミュレーション、ハイパフォーマンスコンピューティング、自由エネルギー計算、膜タンパク質

支援技術の概要

当グループにおいては、主に全原子分子動力学(MD)シミュレーションに関する技術を用いて、タンパク質の動的構造解析の支援を実施する。MDシミュレーションは、生体高分子の動的挙動を原子スケール・分子振動スケールの時空間解像度で捉えることのできる手法であり、ハイパフォーマンスコンピューティング技術の進展に伴って、扱うことのできる対象のサイズが急速に拡大しつつあることで、理論的のみならず実用的にも有用な手法となっている。当グループでは主に産総研の開発したスーパーコンピュータ ABCI を用いて、ペプチドや小タンパク質の折りたたみシミュレーションから、球状タンパク質の溶媒和自由エネルギー計算、膜タンパク質複合体のシミュレーションまで様々な系を対象として扱うことができる。また、当グループで開発した高精度かつ高感度なプロファイル比較に基づくタンパク質立体構造モデリング手法やAlphaFold などの高精度な構造予測手法がシミュレーション初期構造を準備するための方法として利用可能であることで、部分的・全体的に構造未解明のタンパク質であってもシミュレーションの対象とできる可能性を有している。技術的には、レプリカ交換法などの効率的サンプリング手法や自由エネルギー(差)計算のための近似および厳密計算法などの既存技術と連携することや、実験データによってシミュレーションデータの結果を補正する解析法(Chemical Physics Letters 779, 138821 (2021))や機械学習を用いたシミュレーションデータの解析法(Scientific Report 11, 19867 (2021))を独自に開発することで幅広い対象に対して適切な解析を実地することが可能である。

支援技術の利用例

当グループの近年の支援例として以下のような例を挙げる。
1) Cystein-rich motor neuron 1 protein (Crim1) の多量体化に関わる変異の影響を調査するために、野生型および変異型の Crim1 N 端領域のホモロジーモデリングを行い、溶液環境における MD シミュレーションを実施した。(Mammalian Genome 30, 329, (2019))
2) アルツハイマー発病に関わる Ku-DNA 相互作用に対するリン酸化の影響を調査するため Ku-DNA 複合体の MD シミュレーションの実施を支援した。(Commun. Biol. 4, 1175, (2021))
また、その他に典型的な例として、クライオ電顕データに基づいて立体構造モデリングを行なった膜タンパク質複合体の構造安定性を解明するための脂質膜中でのシミュレーションなども実地している。



支援担当者の研究概要

タンパク質のアミノ酸配列情報や立体構造情報、発現情報などは急増の一途をたどっている。こうした大規模データを効果的に取り扱い、そこから生物学的知識を発見・抽出するための計算科学的手法の開発を行うとともに、開発手法をはじめとするバイオインフォマティクス技術を応用し、様々なライフサイエンス研究の推進を支援している。これまでに開発したプロファイル比較に基づく高感度・高精度なタンパク質類似性検索法FORTEを用いて、従来の配列類似性検索手法では検出できなかったII型酵素ペルオキシソーム因子PEX1のN末端ドメインや赤痢アメーバにユニークな酵素輸送受容体CPBFを構成するPPC様ドメインなどの同定および構造予測を行った。またクライオ電子顕微鏡データに基づいて、FORTEを使ったモデリングと分子動力学シミュレーションを使ったフレキシブルフィッティングによる立体構造モデリングを支援した。

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