G3-4 メタボローム解析支援

ユニット名

連携・融合ユニット

支援担当者

所属 ① 九州大学 生体防御医学研究所 附属トランスオミクス医学研究センター
② 九州大学 生体防御医学研究所 附属トランスオミクス医学研究センター
③ 九州大学 生体防御医学研究所 附属トランスオミクス医学研究センター
氏名 ① 馬場 健史
② 和泉 自泰
③ 高橋 政友
AMED
事業
課題名 1細胞/微小組織マルチオミックスのオールインワン解析による生命科学研究の支援
代表機関 早稲田大学
代表者 由良 敬

支援技術のキーワード

メタボロミクス、メタボローム解析、代謝解析、質量分析

支援技術の概要

代謝物の総体解析であるメタボロームは遺伝学的あるいは環境的要因の変化に伴い大きく変動するため高解像度の分子フェノタイプ解析法として広く知られている。代謝物はアミノ酸や有機酸などの親水性化合物から脂質などの疎水性化合物までの極性範囲が広く、陽イオン性、両イオン性、陰イオン性、非荷電化合物といった電荷特性をもつため物理化学的特性が多様となる。さらに、代謝物には同重体や構造・幾何異性体が数多く存在するため、代謝物を包括的かつ正確に測定するためには各種クロマトグラフィーと質量分析 (mass spectrometry, MS) を組み合わせた分離分析法が一般的に使用されている。しかし、1回の分析ですべての代謝物を測定することは実質不可能に近いため、代謝物のカバレッジを向上させるためには、複数の分析システムを組み合わせることが常套手段となっている。

主幹代謝である解糖系、ペントースリン酸経路、クエン酸回路、核酸代謝、アミノ酸代謝などは、生命のエネルギーの生成、細胞の維持ならびに修復プロセスに関わり、また、がんなどの各種疾患を理解する上でも最も重要な経路である。また、これらの代謝中間体の多くはイオン性高極性物質である。我々は、新規の親水性代謝物分析法であるイオンクロマトグラフィータンデム質量分析(IC/MS)を用いて500種の親水性代謝物が測定可能な分析系へと発展させた。一方、脂質の包括的観測を主眼としたリピドーム分析については、超臨界流体クロマトグラフィータンデム質量分析 (SFC/MS/MS) とin silico多重反応モニタリング (MRM) ライブラリーによる独自のワイドターゲット定量リピドーム分析法の開発を行ってきた。既に、22種の脂質クラスおよび23種の脂肪酸側鎖を組み合わせた約2500種の脂質分子を測定対象としたワイドターゲットリピドーム分析法が実施可能な状態にある。

本支援では、体液(血漿50 μL程度)、細胞(1×106個程度)、組織(10 mg FW程度)などの生体試料を対象としたメタボローム解析を行い、病態関連代謝物の同定、代謝制御のメカニズム解明、新規のバイオマーカーの発見などに貢献できる研究支援を実施する。

支援技術の利用例

  • 各種生体試料からの代謝物の網羅的解析
  • 病態関連代謝物の同定、代謝制御のメカニズム解明、毒性評価、新規のバイオマーカーの発見など
  • 支援担当者の研究概要

    我々はこれまで、次世代のメタボロミクス計測技術の開発を行ってきた。例えば、2015年に株式会社島津製作所と共同開発した超臨界流体クロマトグラフィータンデム質量分析装置(SFC/MS/MS)による「絶対定量リピドーム分析法」が挙げられる。本計測技術は、超臨界流体クロマトグラフィーの特性を利用した各脂質クラスの高分離、三連四重極質量分析による高速選択反応モニタリング、安定同位体希釈法を組み合わせることでフェムトモルの感度で脂質のアシル側鎖の脂肪酸情報を取得しながら包括的な脂質分子の定量観測を達成したものである(Takeda, J Lipid Res 2018; Takeda, J Lipid Res 2019)。本技術は、エクソソーム研究(Obata, JCI Insight 2018; Nishida-Aoki, Metabolites 2020)、脂質代謝機能解析(Kobori, Sci Rep 2018; Kunduri, PNAS 2018; Fushimi, J Agric Food Chem 2020)、腎疾患研究(Minami, Autophagy 2017; Matsuda, Autophagy 2020; Yamamoto, Autophagy 2020)、疾患バイオマーカー探索研究(Tamura, Eur J Pharmacol 2018; Shiomi, Atheroscclerosis 2019)などに応用展開した。また、アミノ酸、有機酸、糖、核酸、補酵素などの親水性メタボローム分析法についても、我々独自の技術である「次世代サプレッサーを搭載したイオンクロマトグラフィー高分解能タンデム質量分析法」を開発し、本技術の有用性も実証済みである(Kodama, Nat Commun 2020; Onoki, Redox Biol 2021; Yamauchi, Leukemia 2022; Mise, Nat Commun 2022)。

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