新型コロナウイルスに関する取り組み

創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム(BINDS)では、優れたライフサイエンス研究の成果を医薬品等の実用化に繋げるという事業目的に沿って、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)の治療薬探索に関する研究にも、積極的に取組んでいます。
※ ウイルス名称は、International Committee on Taxonomy of Viruses (ICTV)において、“severe acute respiratory syndrome coronavirus 2” (SARS-CoV-2)に決まりました。病気の名称はCOVID-19です。 これまでの経緯は、国立感染症研究所のサイトへ。

BINDSインシリコユニットでは、2020年2月から、in silico#1解析による治療薬探索に取り組んでいます。ウイルスが感染・増殖するときに働くタンパク質に結合して感染・増殖を防ぐ化合物を、まずは既存薬から見いだす(ドラッグリポジショニング#2)ことを目的として、ドッキングシミュレーション#3やホモロジーモデリング#4によるインシリコスクリーニング#5を行いました。
インシリコスクリーニングで見つかった治療薬候補(ヒット化合物#6)のうち、ケミカルシーズ・リード探索ユニット(ライブラリー・スクリーニング領域)が保有する化合物については、即座に国立感染症研究所に抗ウイルス活性の評価を要請しています。そのほかの化合物も順次入手して評価するとともに、今後の感染症対策研究のためにも、既存薬ライブラリーの充実を図っていきます。
インシリコスクリーニングについては、既存薬に留まることなく、今後はさらに対象を広げて、新規な化合物を見いだすための研究も計画しています。
また、上記のユニット・領域だけでなく、BINDS全課題でも、COVID-19の治療薬探索に関する研究の支援に、積極的に取組みます。例として

  • 構造解析ユニットへの構造解析及びタンパク質生産
  • ケミカルシーズ・リード探索ユニット(構造展開領域)への化合物の誘導体合成展開
  • バイオロジカルシーズ探索ユニットへのゲノム・エピゲノム解析や治療薬候補化合物のADME・安全性評価

等の依頼希望がありましたら、コンサルティング申請より、お申込みください。

大学等アカデミアだけでなく、企業のみなさまも、BINDSの支援を利用できます。
支援の流れはこちらです。 お申込みをお待ちしております。

※研究成果の占有(秘密保持)を希望される場合は、コンサルティングの段階で、BINDSとしての支援を終了し、直接の共同研究や受託研究に発展できます。

インシリコユニットによるSARS-CoV-2のタンパク質立体構造予測等

リンク集(プラットフォーム機能最適化ユニットによるSARS-CoV-2の情報収集)

日本医療研究開発機構(AMED)の取組み

その他

用語解説

#1in silico

実験を生物の体で行う事を「in vivo」、細胞や物質(タンパク質など)など試験的条件で行う事を「in vitro」と手法により分けていたところ、コンピューターの進化により、それまでの知識・情報から(統計的)計算で実験結果を予測する手法が出てきたため、これを「in silico」とした(コンピューターのシリコンチップの中での意味)。実際に試験するin vitroを「Wet」、模擬実験であるin silicoを「Dry」と分けることもある。

#2ドラッグリポジショニング

既に販売/使用されたことのある薬が、他の病気に効果がないか調べること。既存薬は、人体での吸収・体内分布・代謝・排泄、安全性(毒性)が検証されているため、臨床試験の一部または全部が免除され、より早く実際の医薬品として認められる可能性が高い。また、医薬品としての製造方法も確立されているので、医薬品として許可されれば、すぐに利用可能になる。

#3ドッキングシミュレーション

薬など化合物が生物に作用するには、身体のタンパク質にくっつく(結合する)必要がある。低分子化合物とタンパク質(生体高分子)との間の結合力(くっついた形の安定構造)をコンピューター上で計算的に推定する手法のことをドッキングシミュレーションという。

#4ホモロジーモデリング

あるタンパク質のアミノ酸配列を、アミノ酸配列とタンパク質の立体構造のデータベースと照らし合わせ、よく似たアミノ酸配列は、似た立体構造(テンプレート)になると予測して、アミノ酸配列から、立体構造を計算していく手法。X線や電子顕微鏡によるタンパク質の構造解析技術の進化によって、データベースが充実し、モデリングの精度が向上している。

#5インシリコスクリーニング

「薬が効く」ためには、細胞の特定のタンパク質に、その薬が「うまく、くっつく(結合する)」必要がある。タンパク質の形と、薬の化合物の形が分かっていれば、この2つが結合するかどうかを、コンピューターシミュレーションで予測することができる。これをインシリコスクリーニングという。正しく予測計算できるような、ソフトウエアの使い方・条件設定が、研究者の技術となる。 計算上の結果なので、in vitroで検証する必要があるが、従来の創薬研究では、無数の化合物をin vitroで試験しており、莫大な経費と時間がかかっていたところを、あらかじめin silicoで効果がありそうな化合物に絞り込むことで、より短期間で限定的なin vitro実験で、薬になりそうな化合物を見つけられると期待されている。

#6ヒット化合物

スクリーニング等の試験の結果、作用(活性)がみられた化合物のこと。インシリコスクリーニングでは、目的のタンパク質に、計算上うまく結合するものをヒット化合物とみなす。ヒット化合物の構造を元に、より医薬品としての効果が高くなるよう構造展開した誘導体がリード化合物である。